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製薬業界の「2010年問題」とは? 主力薬品特許切れ続々 収益源に危機感(産経新聞)

【社会部オンデマンド】

 「大手製薬企業が主力医薬品の特許切れによる『2010年問題』に直面していると聞きました。具体的にはどのような問題なのでしょうか。医薬品の特許の仕組みはどうなっているのですか?」=埼玉県熊谷市の女子大学生(22)

 ■低価格なジェネリック

 医薬品の特許は他の一般的な特許と同様、有効期間は出願日から20年で、有効成分を持つ物質や製造方法などが対象となる。医薬品は開発期間が9年~17年と長く、承認申請にかかる時間で特許期間が浸食されるため、最長5年間の延長もある。

 特許が切れると、後発医薬品(ジェネリック)メーカーは同じ薬効成分を使った薬を売り出せるようになる。新薬の研究開発には莫大(ばくだい)な費用がかかるが、ジェネリックの場合は研究費をほとんどかけずに安く製造できる。

 国内ではジェネリックの価格が先発薬に比べて2~7割ほど安いとされる。

 しかし、基本的にすべての国民が医療保険に加入している日本では患者の自己負担が原則3割で済むことや、先発薬のブランド性を重視する傾向があり、「ジェネリックのシェアは約2割にとどまっている」(医療関係者)のが現状だ。

 一方、医療費の高額な米国では、ジェネリックのシェアが約7割を占める。このため、先発薬の特許が切れると安価なジェネリックが登場して一気にシェアを奪う。市場の大きな米国での主力品の特許切れが企業に与える影響は大きい。

 そもそも、米国で2010年を中心に大型医薬品の特許切れが集中するのはなぜなのだろうか-。

 それは1990年代初め、医学と化学物質精製や合成能力の進歩で、高血圧症向けなどの大型新薬が続々と開発されたことにさかのぼる。米国の景気拡大の波に乗り、市場が大きく成長したが、特許切れも2010年前後に集中。特許切れ後、一気にジェネリックに入れ替わり、先発薬の収益が急速に落ち込むのが「2010年問題」だ。

 売上高で世界の頂点に立つ米ファイザーの高血圧症治療薬「ノルバスク」は07年3月に特許が切れ、米国での売上高が06年度から3年間で約97%も落ちた。「米国では特許が切れた翌日から売り上げが急降下する。ほとんどゼロになるといっても過言ではない」と業界関係者は明かす。もちろん、世界に進出する日本企業も例外ではない。

 ■危機感強める日本企業

 国内最大手の武田薬品工業では主力品の抗潰瘍薬「タケプロン」の特許が09年11月に切れ、09年度の米国の売上高は約3割減少した。同社は10年度の連結売り上げ見込み1兆4千億円のうち、タケプロンの特許切れが800億円の減収要因になると見込む。加えて同社は12年までに、米国だけで3千億円超と連結売上高の2割を稼ぐ糖尿病薬「アクトス」と高血圧薬「ブロプレス」の特許が切れる。

 武田の長谷川閑史(やすちか)社長は「アクトスの特許切れの影響が通年で出てくる13年度が売り上げの底になる可能性がある」と危機感を強めている。

 アステラス製薬は08年4月に免疫抑制薬「プログラフ」が、09年10月に排尿障害薬「ハルナール」がそれぞれ特許切れを迎えた。昨年8月に米国でプログラフのジェネリックが発売され、同社は10年度のプログラフの売上高(北米)が前年に比べて36・8%減少すると見込んでいる。米国では別の製薬会社を通じて販売しているハルナールのロイヤルティー収入なども9割以上減少する見通しだ。

 このほか、第一三共の抗菌剤「クラビット」(09年度売上高872億円)が10年12月に、エーザイのアルツハイマー薬「アリセプト」(同3228億円)と抗潰瘍薬「パリエット」(同1480億円)が10年11月と13年5月にそれぞれ特許切れを迎える。

 そこで各社は市場を牽引(けんいん)してきた高血圧症や高脂血症といった生活習慣病向けの医薬品に加え、がんや鬱病(うつびよう)など最近の医療ニーズの高い分野の薬の開発に力を入れている。

 また、生き残りをかけたM&A(企業の合併・買収)も活発化だ。特定の分野に強みを持つ企業から技術を獲得したり、成長著しい新興国市場への販路拡大を進めるためだ。

 ただ、企業の多くは技術革新の壁に阻まれ、新たな収益源となる画期的な新薬を開発できないでいる。

 製薬業界に詳しいクレディ・スイス証券シニアアナリストの酒井文義氏は「新薬を出すのが難しくなり、製薬業界はますますハイリスク、ハイリターンになる。大手もジェネリックに取り組むなど新たな対応策が必要だ」と話している。(長島雅子)

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